厳しい中古車輸入規制と軍事政権交代 病院外観写真

 当プロジェクトは、2012-13年度15周年記念事業の一つとしてスタートしましたが、タイの厳しい中古車輸入規制が障壁となり実現しませんでした。再度動き始めたのは、鈴鹿西RCからタイ・ルンピニーRCの紹介を受けコンタクトを始めた2013年9月のことです。やりとりを続けていくうちに実現の目処が確認できたため、2014-15年度ロータリー財団地区補助金を申請しました。途中、軍事政権交代などで審査がより厳しくなり諦めかけたこともありましたが、ルンピニーRCが諦めず交渉を続けてくれた結果、年度末ギリギリの6月に輸出が完了しました。しかし、現地に着いてから税関を通過するのにさらに3ヶ月を要しました。そして、2015年11月8日、ようやく贈呈式が開催される運びとなりました。

貧困地区に届いた「希望」、そして歓迎

 寄贈先は、タイ国内で最も貧困地区と言われるアムナートチャルーン県。バンコクから約650km離れたラオス国境近くの東北地方です。タイでは日本と違い救急車は病院が所有します。救急車不足により、病人の多くはピックアップトラックの荷台に乗せてガタガタ道を搬送されるため、途中で死亡してしまうケースも少なくないそうです。

 贈呈式には鈴鹿シティRCから10名、現地からは知事・病院理事長をはじめルンピニーRC・アムナートチャルーンRCが参加し、盛大に開催されました。職員による民族踊りが披露された後、知事・病院理事長から挨拶がありました。感謝の言葉の中でやたら排気量と4WDを称賛するので不思議に思っていましたら、スコール等でぬかるんだ未舗装路を走るのに絶大な威力を発揮するのだそうです。これには私たちも想定外でした。

現地贈呈式の模様(左)/キートロフィー贈呈(右)

 その後、近藤会長から病院理事長へキートロフィーが手渡され、実車の前での記念撮影はみんな笑顔でした。贈呈式のあとは会場を移し、歓迎の大昼食会でイサーン(東北)料理をご馳走になりました。料理はいささか辛かったけど、それぞれのテーブルでは身振り手振りで会話が弾み現地ロータリアンとの親睦が図れました。因みにアムナートチャルーンRCは、15周年のアジア支援事業で学校図書を贈呈したときにもお世話になりました。会話の中で、運ばれる病人はトラックの荷台に乗せられた瞬間「死を意識する」が、救急車だと「助かるという希望を持つ」と言っていたのが印象的でした。

寄贈した救急車の前で写真撮影
失敗を恐れず、新たなチャレンジを続ける 空港にて集合写真

 市から払い下げを受け3年8ヶ月・・・こうして救急車プロジェクトは完結しました。長かったけど達成感でいっぱいです。現地からは、これでルートはできたのでぜひ続けてほしいとの要望もいただきました。

 CLPの観点からも財団補助金を使い一人でも多くの命を救うためにこの事業が継続できるよう長期戦略・危機管理委員会で諮っていきたいと思います。